CBD業界の闇検証実験:果たして茎と種からCBDは取れるのか?
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最初にこちらの「日本のCBD業界の闇:2024年大麻取締法改正後の真実と未来」を読んでいただけると理解がよりしやすいので是非。
※この検証記事は。Phayao Cannavigate Japan様ご協力のもと検証をしております。
結論
茎から1kgのCBDアイソレートを抽出するには茎が6645 kg
種から1kgのCBDアイソレートを抽出するには種が 107,639 kg
採算性が合わないという結果になりました。
2024年12月11日の時間停止 - 旧規制下のCBD業界
茎と種のみ許可された時代の実態
2024/12/12以前は、大麻取締法では、CBDは大麻草の「成熟した茎と種」からのみ抽出が許可されていました。
海外の成分分析所及び原料販売している代理店or農家側も茎と種から抽出されたものであるという報告を受けて、日本のCBD事業者は輸入を行っていた。
しかし、松沢 成文 参議院議員によると「CBDを大麻草の「成熟した茎と種」からのみ抽出することは、植物の特性及び現在の製造技術からも現実には不可能である」という調査結果が報告されています。
引用元はこちら:第211回国会(常会) 大麻由来成分「CBD」の違法な流通実態に関する質問主意書
この矛盾は一体なんなのでしょうか?
業界の裏側:証明書の真相
海外から原料を取引した事業者にヒアリングを行うと、問い合わせても「茎と種から抽出している」と言う返答がほとんどである。
仮説ではあるが、海外の事業者も日本側のレギュレーションを知った上で返答している可能性が大。
上記が本当である場合は、成分分析表や書類など偽造に当たる。
前提が崩れると、流通経路すらも危うい。
誰がどこでどんなものを流通させているか明確な情報すらも全て偽造ということになってしまう。
米国機関の証言
米国の麻薬取締局(U.S. DRUG ENFORCEMENT ADMINISTRATION)と司法省(U.S. DEPARTMENT OF JUSTICE)も、「大麻草の茎と種子からCBDを含む抽出物を製造するのは現実的ではない」ことを公式見解の中で明らかにしている。また、米国の麻産業協会(US HEMP INDUSTRY ASSOCIATION)の責任者も、「米国で製造される九十九%のCBDは大麻草の茎と種ではなく、葉、花穂から抽出されてる」と述べている。
国を超えて検証 - 茎と種からのCBD抽出実験
Phayao Cannavigate Japan様ご協力のもと検証をしております。
- 今回の検証はCentral lab thai へ依頼
- 茎と種の品種は「CBD Charlotte’s Angel」
- 分析方法は「HPLC-DAD/MSD」
- 「茎」と「種」が1kgあたりにCBDがどれくらい含有されているか検証
衝撃の検証結果
茎の検証結果
茎のCBD含有量は、「150.50mg/kg」
種の検証結果
種のCBD含有量は、「9.29mg/kg」
1kgの茎から得られるCBDは150.50mgです。したがって、1kgのアイソレートを得るために必要な茎の量は、「150.50 mg kg / 1,000,000 mg = 6645 kg」
1kgの種から得られるCBDは9.29mgです。したがって、1kgのアイソレートを得るために必要な種の量は、「9.29 mg kg / 1,000,000 mg = 107,639 kg」
各茎や種から100kgのアイソレートを抽出しようと思った際に、茎は「 664,450kg(約66万トン)」種は「 10,760,000kg(約1,076万トン)」必要ということになります。
10kgアイソレートが必要な場合は、茎は「 66,445 kg(約6万トン)」種は「 1,076,000kg(約107万トン)」となります。
実験データ結果に基づく各社販売価格との比較
※2024/12/12以前のレギュレーションだった場合の仮説検証です。
各企業のCBDアイソレート価格はおおよそ以下のケースが目立ちます。
「A社 400円/g」「B社 1700円/g」「C社 1000円/g」中には、1kg/20~30万円などもあります。
必要な茎と種の量を計算すると以下
必要な茎の量 (kg) | 必要な種の量 (kg) | |
---|---|---|
CBDアイソレート10kg | 66,445 kg(約6万トン) |
1,076,000kg(約107万トン) |
CBDアイソレート100kg |
664,450kg(約66万トン) |
10,760,000kg(約1,076万トン) |
各A社・B社・C社のごとに10kg・100kgの原料を生成するにはいくらかかるのかは以下。
各A社・B社・C社のごとに10kg・100kgの原料の価格計算をしてみた
茎そのものを販売している金額がこちらでは調査できなかったため、https://herbiesheadshop.com/というシード屋さんの「CBD Charlotte’s Angel feminized seeds」を中心に計算していきます。
CBD Charlotte’s Angel feminized seedsのスペックと価格帯はこちら。
引用元:https://herbiesheadshop.com/cannabis-seeds/cbd-charlottes-angel
¥ 4011.72円 | |
|
¥6102 円 |
|
¥9639.39 円 |
種の成分分析により以下
CBDアイソレート量 (g) | 必要な種の量 (kg) |
---|---|
1 g | 107.6kg |
10 g | 1,076kg |
100 g | 10,760kg |
1000 g | 107,600kg |
上記の表と合わせて必要な金額が以下(「100%の収率(ロスなし)」を仮定)
アイソレート量 (g) | 必要な種の量 (kg) | 必要な種の量 (seeds) | 価格 (円) |
---|---|---|---|
1 g |
107.63 kg |
約108 seeds | 約104,096 円 |
10 g |
1,076.34 kg |
1,077 seeds | 約1,038,163 円 |
100 g | 10,763.36 kg | 約10,764 seeds | 約10,375,839 円 |
1000 g | 107,633.59 kg | 約107,634 seeds | 約103,752,609 円 |
10,000 g | 1,076,335.88 kg | 約1,076,336 seeds | 約1,037,522,252 円 |
100,000 g |
10,763,358.78 kg |
約10,763,359 seeds | 約10,375,221,711 円 |
- 1gのCBDを得るだけでも、理屈上は約108粒(108kg)の種子が必要
- 100,000g(=100kg)のCBDを得るには、約1,076万粒(1,076万kg)もの種子が必要
ここでもう一度各社の金額を確認しましょう。
会社名 | 価格 (円/g) | 1kgあたりの価格 (円) | 必要な種の量 (kg) |
---|---|---|---|
A社 | 400 円/g | 400,000 円/kg | 107.6 kg |
B社 | 1700 円/g | 1,700,000 円/kg | 107.6 kg |
C社 | 1000 円/g | 1,000,000 円/kg | 107.6 kg |
上記の表と実際の種の値段から実際の金額を算出した結果と付き合わせると以下
種だけを比較した場合の損益計算テーブル
※「1seed=1kg」や「抽出ロス0%」など、実際には非現実的な前提を置いています。
※ 種子以外の栽培コスト・人件費・設備費・抽出コストなどは一切含んでいません。
A社:400 円/g の場合
必要CBD (g) | 必要種子量(kg) | 種コスト(円) | A社 売上(円) | A社 損益(円) |
---|---|---|---|---|
1 | 約 108 | 約 103,741 | 1 × 400 = 400 | 400 - 103,741 = -103,341 |
10 | 約 1,076 | 約 1,037,504 | 10 × 400 = 4,000 | 4,000 - 1,037,504 = -1,033,504 |
100 | 約 10,763 | 約 10,375,178 | 100 × 400 = 40,000 | 40,000 - 10,375,178 = -10,335,178 |
1,000 | 約 107,634 | 約 103,752,319 | 1,000 × 400 = 400,000 | 400,000 - 103,752,319 = -103,352,319 |
10,000 | 約 1,076,336 | 約 1,037,522,243 | 10,000 × 400 = 4,000,000 | 4,000,000 - 1,037,522,243 = -1,033,522,243 |
100,000 | 約 10,763,359 | 約 10,375,221,711 | 100,000 × 400 = 40,000,000 | 40,000,000 - 10,375,221,711 = -10,335,221,711 |
B社:1,700 円/g の場合
必要CBD (g) | 必要種子量(kg) | 種コスト(円) | B社 売上(円) | B社 損益(円) |
---|---|---|---|---|
1 | 約 108 | 約 103,741 | 1 × 1,700 = 1,700 | 1,700 - 103,741 = -102,041 |
10 | 約 1,076 | 約 1,037,504 | 10 × 1,700 = 17,000 | 17,000 - 1,037,504 = -1,020,504 |
100 | 約 10,763 | 約 10,375,178 | 100 × 1,700 = 170,000 | 170,000 - 10,375,178 = -10,205,178 |
1,000 | 約 107,634 | 約 103,752,319 | 1,000 × 1,700 = 1,700,000 | 1,700,000 - 103,752,319 = -102,052,319 |
10,000 | 約 1,076,336 | 約 1,037,522,243 | 10,000 × 1,700 = 17,000,000 | 17,000,000 - 1,037,522,243 = -1,020,522,243 |
100,000 | 約 10,763,359 | 約 10,375,221,711 | 100,000 × 1,700 = 170,000,000 | 170,000,000 - 10,375,221,711 = -10,205,221,711 |
C社:1,000 円/g の場合
必要CBD (g) | 必要種子量(kg) | 種コスト(円) | C社 売上(円) | C社 損益(円) |
---|---|---|---|---|
1 | 約 108 | 約 103,741 | 1 × 1,000 = 1,000 | 1,000 - 103,741 = -102,741 |
10 | 約 1,076 | 約 1,037,504 | 10 × 1,000 = 10,000 | 10,000 - 1,037,504 = -1,027,504 |
100 | 約 10,763 | 約 10,375,178 | 100 × 1,000 = 100,000 | 100,000 - 10,375,178 = -10,275,178 |
1,000 | 約 107,634 | 約 103,752,319 | 1,000 × 1,000 = 1,000,000 | 1,000,000 - 103,752,319 = -102,752,319 |
10,000 | 約 1,076,336 | 約 1,037,522,243 | 10,000 × 1,000 = 10,000,000 | 10,000,000 - 1,037,522,243 = -1,027,522,243 |
100,000 | 約 10,763,359 | 約 10,375,221,711 | 100,000 × 1,000 = 100,000,000 | 100,000,000 - 10,375,221,711 = -10,275,221,711 |
CBDを茎や種から抽出しようとすると圧倒的にコストパフォーマンスが悪いことがわかりました。
実際は、バッズ(花穂)からCBDを抽出する場合がほとんどで、100gバッズ(花穂)から大体9%から10%など大体1割ほどCBDが抽出可能です。
上記の表と比べるとバッズ(花穂)から10gのCBDアイソレートを抽出しようとすると100gのバッズ(花穂)で済みますが、種などになると種が約 1,076kg必要になります。
茎や種からの抽出は圧倒的にコストパフォーマンスに見合わないということが証明できました。
おおよその検討はついていましたが、数字に出してみると日本のCBD事業者はどのような栽培方法や抽出方法でCBDアイソレートを安く輸入しているかますます気になります。
法改正後の新たな展開
2024年12月12日以降の規制変更とその影響
大麻取締法が改正後の昨今同じ手法で日本へCBDが輸入されることが予想されます。
過去の違法行為を隠蔽する事業者も少なくありません。このままでは価格競争が激化し、品質が低下する恐れがあります。
また、天然の麻からのCBDではなく「合成物」による商品流通が昨今起きており安全が確認されていないものを正しいと発言する事業者も数多くいます。
「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」が施行に伴い、違法物を販売していた事業者が摘発され、違法基準な製品を販売し購入者が多数病院送りなったことをきっかけに既存カンナビノイド事業者たちによる自己責任論のなすりつけ合いや歪んだ倫理観による論争が起きています。
歪んだ自己責任論記事一覧魚拓
・その1
・その2
・その3
・その4
etc ...
CBD業界の未来予測
12/12以前のCBD製品を破棄しなければならず再輸入し販売まで漕ぎ着けられない事業者が閉店を後を立ちません。
また、CBD製品を販売しているネットショッピングサイトも製品掲載を取りやめているところも相次いでいます。
仮説ですが、今回のCBDのTHC許容量が合法国に比べて以上に厳しい理由が、違法成分を含んだCBDを反社会的勢力者による流通を阻止し一度この市場を締め付けているものではないかと筆者は予測しています。
CBDアイソレートorオイルのTHC許容量10ppm、水溶性CBD 0.1ppm、その他1ppmなど基準値が公開されていますが、基準値をクリアできない輸出国も多々出てきているため今回の基準値選定は市場の健全化というより浄化に近い水準かもしれません。
画像素材提供
引用元
https://phayao-cannavigate-japan.com/articles/06-verification-of-cbd-content-in-stems-and-seeds