CBD原料のCOA(分析証明書)ガイド|PGRや農薬のリスクを見抜くチェックポイント

以前、「PGR不使用の見分け方|オーガニックCBD製品で健康リスクを避ける方法という記事を書かせていただきました。

その続編になり、巷のCOA(分析証明書)が色々なサイト内で公開表示されていますが農薬などについてはどこの部分を確認すれば良いか?迷われるかと思います。

そんな見るべきポイントを弊社CBD原料のCOA(分析証明書)を見ながら解説していきます。

そもそもPGRとは?

PGR(Plant Growth Regulator)植物成長調整剤 と言われています。

植物の成長や発育をコントロールして、品質を高めたり、収量を上げたりなど生産を安定させるための薬剤を指します。

「発がん性」の噂は本当?

すべてのPGRが危険なわけではありませんが、以下のようなリスクが指摘されています。

例1:ダミノジド(Daminozide / Alar)

  • 発がん性の疑い(アメリカでは食品作物への使用を禁止)
  • 日本では一部の農作物に使用可能

例2:パクロブトラゾール(Paclobutrazol)

  • 肝毒性・生殖毒性があるとの報告
  • 土壌残留が非常に強い(最大18カ月以上)

他にも、「Chlormequat chloride(生殖毒性の報告)」「Uniconazole(成長抑制ホルモン)」などがあります。

PGR全般の健康リスクに関する情報源

  • 肝毒性、腎毒性、遺伝毒性、神経毒性、発がん性、催奇形性の可能性
  • PGRの残留が人間の健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
  • 消費者の健康リスクと環境汚染
    • PGRが野菜の生産性を向上させる一方で、健康や安全性に関する懸念が存在します。 ​
    • 土壌に残りやすく、栽培後の作物にも残留することがある(例:パクロブトラゾール)。
    • PGRの使用は農薬のように表示義務がない場合も多く、消費者が判断できないことがある

弊社のCOA(分析証明書)解説

以下3枚にわたるCOA(分析証明書)があります。

前章で記載されているPGR(植物生育調節剤)農薬の項目はないですが他の農薬区分が記載されています。

全ての項目においてResult列が「ND(Not Detected)」となっており、

これは「検出されなかった=残留なし」という意味です。

補足でこのCOA(分析証明書)解説すると以下です。

  • 「CBD濃度:99.76 %w/w(NLT 98%)」
     → CBD濃度は 98%以上であるべきところ、99.76%含まれており、十分に規格合格
  • 「鉛(Pb):0.967 ppm(NMT 10 ppm)」
     → 鉛の残留量は 10ppm以下でなければならない中、0.967ppmなので問題なし
  • 「Acephate(有機リン系殺虫剤):ND(NMT 0.10 mg/kg)」
     → 検出されておらず、安全性が高いと評価できる。

農薬の説明箇所は、2ページ目と3ページ目のPesticides(農薬)」になります。

農薬の種類ごとに分類されて記載されています。

Carbamate group(カーバメート系)

主に殺虫剤として使用されます。

水溶性が高く、環境中で比較的速やかに分解されるため、残留性が低いとされています。

哺乳類への毒性は一般的に低いですが、高濃度での曝露は健康リスクを引き起こす可能性があります。

また他の系統農薬も以下のようなものがあります。 

カルバリル(Carbaryl):広範な害虫に効果があり、農業や園芸で使用されます。

カルボフラン(Carbofuran):土壌中の害虫防除に用いられますが、高い毒性のため多くの国で使用が制限されています。

Organophosphate group(有機リン系)

  • 用途
    • 主に殺虫剤として広く使用されている。
  • 特徴
    • 神経毒性が高く、特に人間や動物に対しても有害。
    • 環境中での分解は比較的速いが、不適切な使用で健康被害の可能性がある。
  • 代表的な有機リン系農薬
    • パラチオン(Parathion)
      • 高い毒性を持ち、多くの国で使用が禁止または制限されている。
    • マラチオン(Malathion)
      • 比較的低毒性で、農業や家庭用として広く使用されている。

Organochlorine group(有機塩素系)

  • 用途
    • 広範囲の害虫防除に使用されていた。
  • 特徴
    • 環境中での残留性が非常に高く、生物蓄積性がある
    • 多くの国で使用が禁止または制限されている。
    • 分解が遅く、食物連鎖を通じて動物体内に蓄積しやすい。
    • 神経系への影響があり、健康リスクがある。
  • 代表的な有機塩素系農薬
    • DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)
      • かつてマラリア防除などで使用されていたが、現在は使用禁止。
    • エルドリン(Aldrin)・ディルドリン(Dieldrin)
      • 土壌害虫防除に使用されたが、毒性と残留性の高さから使用禁止。

Pyrethroid group(ピレスロイド系)

  • 用途
    • 天然の除虫菊から抽出されるピレトリンに類似した合成殺虫剤として使用。
  • 特徴
    • 哺乳類への毒性は比較的低いが、高濃度・長期曝露には注意が必要
    • 光や空気に対して安定性が高く、効果が持続しやすい。
  • 代表的なピレスロイド系農薬
    • ペルメトリン(Permethrin)
      • 衣類や蚊帳の処理、家庭用殺虫剤として使用。
    • シフルトリン(Cyfluthrin)
      • 農業・公共衛生用途で使用される広域スペクトルの殺虫剤。

 

 

NMT(Not More Than)」の基準を確認

※NMT Not More Than「この成分が超えてはならない」という意味

NMT 0.10 mg/kgは0.10 mgを超えていないことを意味する)

  • 例えば:
    • Acephate(有機リン系殺虫剤) の項目:NMT 0.10 mg/kg → 検出されても0.10mg/kg以下ならOK
    • ResultがND → =ND(Not Detected)完全に検出されていない 
    • 「Acephate は 0.10 mg/kg を超えてはならない。今回の検査では検出されなかった(ND)ので問題なし」という解釈になります。

類似表記:NMTと対になる表現

記号 意味
NMT Not More Than(~を超えてはならない)
NLT Not Less Than(~未満ではならない)例:CBD濃度 NLT 98%
ND Not Detected(検出されず)
N/A Not Applicable(該当なし、測定不要)

 

表記 意味 製品評価における意味合い
NMT 0.10 mg/kg 最大許容値 これ以上含まれていたらNG(違反)
ND 検出されなかった 極めて安全性が高い証拠の一つ

COA(分析証明書)用語・略語一覧表

略語/用語 意味(英語) 日本語訳・解釈 製品評価での意味/使い方
COA Certificate of Analysis 分析証明書 第三者機関が発行する、安全性と品質の証明書
NMT Not More Than 最大許容値 この数値を超えてはいけない(例:NMT 0.10 mg/kg)
NLT Not Less Than 最小保証値 この数値未満ではいけない(例:CBD濃度 NLT 98%)
ND Not Detected 検出されず 測定限界以下で含まれていないと判断された
LOD Limit of Detection 検出限界 この数値以下では成分が検出できない
LOQ Limit of Quantification 定量下限 この値以上でなければ正確に量を測定できない
cfu/g Colony Forming Unit per gram グラムあたりの菌数(微生物) 微生物の衛生検査で使用される単位
ppm Parts Per Million 100万分の1(= mg/kg) 主に重金属や農薬の単位として使用
%w/w Weight/Weight Percent 重量百分率 成分の濃度を%で表示(例:CBD 99.77%)
TAMC Total Aerobic Microbial Count 総好気性微生物数 食品やサプリでの衛生管理基準の一つ
TYMC Total Yeast and Mold Count 酵母・カビの総菌数 品質や保存性の指標になる微生物検査値
Absent 存在せず 指定された量内で完全に検出されなかった

最後に

いかがだったでしょうか?COA(分析証明書)を見る上での簡単な基準が見ることができたかと思います。

昨今COA(分析証明書)を出している事業者に文字が見れないサイズで掲載していたりCOA(分析証明書)を使い回している事業者が数多く見受けられます。

大手モールサイトは成分分析の他にプロダクトとして作った後のCOA(分析証明書)も求められ始めており一層ユーザー周知が重要になってきたかと思います。

厚生労働省が製品分析を行える機関一覧を提示しております。が、

2025/3/25日に行われた「CBD・ヘンプ業界横断勉強会兼懇親会」にて

厚労省が掲載している「製品中のΔ9-THCの含有量に関する検査が可能な機関」
は特段検査基準レギュレーションが定まっているわけではなくほぼ厚労省への挙手制だそうです。
この検査機関一覧でLC-MS/MS、LC-QTOF-MS等で検査ができるかというとそうではない可能性が高いそうです。
(設備があって確認が取れているかというとそういうわけではない)
なので検査機関に対してどのような分析が可能か詳しく聞いた方が良いです。

 

参考文献

植物生育調節剤について

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